2012年4月12日木曜日

犬の病気・猫の病気を解説「ペットの病気大百科」腫瘍・細胞腫


がんはコンパニオン アニマルの代表的な死亡原因の1つです。アメリカの統計ではコンパニオン アニマルの約25% (大部分は老齢の動物) がその寿命の間にがんを発症しており、これからは10年以上生きる動物の2分の1ががんで死亡するだろうとも言われています。がんの発生率は着実な勢いで増加しているようです。この増加の理由としては、老齢に達したペットの数が増えたこと (つまり、動物のヘルスケアが進歩したため感染症などがコントロールされ若齢の時に他の病気で死ぬ動物が少なくなったこと)、がんに対する認識と診断方法が向上したこと、獣医と飼い主の双方でがん治療をより希望するようになったこと、遺伝学的変化、そして環境的変化などがあげられます。

動物ががんになった場合、飼い主は 「なぜうちの子ががんになったのだろう」 と疑問に思うでしょう。しかし、この疑問の答えは現時点ではまだわかっていません。人間のがんと同様に、コンパニオン アニマルで診断されるほとんどのがんの原因はまだ十分に解明されていません。また、原因や危険因子が見つかったがんはごくわずかしかありません。

動物のがんの症状はほとんど人間のがんの症状と同じです。動物にとっても、がんは早期発見が大事です。治療の成功は 「いかに早期にがんを発見できるか」 にかかっていると言ってもよいでしょう。がんの最も一般的な徴候 (初期症状) には以下のようなものがあります:


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1. なかなか消えない、またはどんどん大きくなる異常な腫れ
2. 治りにくい傷
3. 原因不明の体重減少
4. 食欲不振
5. 鼻や口など体の開口部からの出血や分泌物
6. 特に口の悪臭
7. 食べたり飲み込んだりしにくい
8. 運動をしたがらない、あるいはスタミナの減少
9. 長引くびっこ
10. 呼吸、排尿、あるいは排便が困難
11. 行動の変化

がんを説明するために使われる用語には紛らわしいものがあります。同じ言葉でも別の人には別のことを意味する場合があるでしょう。一般にがんに関して使用されるいくつかの用語を以下に説明します。

がん:異常な細胞が無制限に成長したり体の他の部分に広がる病気の総称。

腫瘍:抑制されず異常に増殖した細胞で構成される新しい組織。良性と悪性があります。

腫瘍学/腫瘍学者:腫瘍学はがんの診断や治療に取組む医学の一分野であり、腫瘍学者はこの分野を専門に扱う医師のこと。

悪性腫瘍:発生した場所にもとからあった細胞を再生できなくさせたり、発生した場所を侵食する、あるいは体の他の部分に広がる性質を もつタイプのがん細胞で構成される腫瘍。このようながん細胞の性質は、患者が死亡する原因になることもあります。

良性腫瘍:悪性腫瘍の反対。良性腫瘍は、体の他の部分に広がったり、がんの性質のために患者が死亡するということはあまりなく、比較的良い結果が期待できます。しかし、良性腫瘍が悪性腫瘍のような性質を示す例外もたまにあります。

原発部位:最初にがんが発生した場所のこと。


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転移:がんが最初に発生した場所から、直接その臓器や部分とは接していない別の場所に広がること。がんが一番転移しやすい先は肺とリンパ節で、たいていは血流とリンパ系から転移していきます。

転移部位:腫瘍が広がった先の場所のこと。

ステージ分け:腫瘍がどのくらい進行しているか、または腫瘍が体の他の部分に広がっていないかなど、腫瘍の進行程度を調べること。一般に 「ステージ」 はレントゲン撮影、超音波、血液検査、リンパ節吸引、骨髄吸引などの検査を行って判断します。ステージ分けは、最適な治療の選択肢を決定したり治療の結果を予測する際に役立ちます。

吸引:体液や組織などを体内の特定の部分から採取すること。何かを 「吸引」 する場合、まず注射針のついた注射器を組織に差して注射器を引きます。すると細胞が組織からはがれ注射器の中に吸い込まれます。次にこの細胞をスライドにのせて顕微鏡で調べます。

細胞診:吸引などの技術 (病変部分からこすり取ることが多い) によって体から採取した細胞を顕微鏡で調べて診断をつけること。

生検 (バイオプシー):正確な診断を確立するために、病変部分の組織を小さく切り取って顕微鏡で調べること。組織を顕微鏡で調べて診断をつけることを組織診といいます。がんの診断をする上で生検はとても重要であり、生検を行わなければ診断をつけられない病気もたくさんあります。


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がん腫:皮膚や臓器の表面を構成している上皮細胞から発生するタイプの悪性腫瘍で、周囲の組織に浸潤したり転移する傾向のあるもの。皮膚がん、腸がん、子宮がん、肺がんなどがあります。

腺腫:腺組織で構成される良性の腫瘍。

肉腫:骨や軟骨などの結合組織や筋肉から発生する悪性腫瘍。

未分化:細胞の分化や細胞同士の位置付けが失なわれること。未分化な腫瘍は一般に非常に悪性で、進行が早いと考えられています。

マージン:手術で切除した腫瘍のまわりの組織部分。手術後の生� ��でこの部分に腫瘍細胞が発見されなければこのマージンは 「クリーン」 (つまり腫瘍が完全に取り除かれた状態) で、腫瘍細胞が発見されれば 「ダーティ」 (つまり腫瘍は完全に取り除くことができず腫瘍細胞が残されている状態) になります。ただし、マージンがクリーンでも腫瘍が再発することがあります。

グレード分け:腫瘍の 「グレード」 を判断するために、腫瘍を顕微鏡で調べて特徴を判断すること。この 「グレード」 によって、腫瘍の進行具合がどの程度早いかを予測できます。

予後診断:病気にかかった時に、これからどのように健康状態が変化していくかの予測。病気が治癒したり軽くなると思われる場合は予後が良い、反対に病気が悪くなったり死亡する可能性が高い場合は予後が悪いといいます。

プロトコール:実施される治療の計画


サイクル:何度も繰り返される基本的な計画。例えばある化学療法の薬は、しばしば 「サイクル」 すなわち同じスケジュール、同じ順序で何回も繰り返し投与されるでしょう。

緩和ケア:末期がんなどの回復不可能な動物のケアにおいて、延命を目的とせず動物のクオリティ オブ ライフの向上を主な目的として行う医療・看護などの総称。治療の目的は病気の治癒ではなく、患者の痛みを取り除いたり病気の症状を緩和することです。

クオリティ オブ ライフ:全く健康である状態を最高、死亡を最低として、ある時点での健康状態がその動物にとってどれだけ快適であるかを示す指標。「生命の質」 と訳され、医療関係者の間では頭文字を取って 「QOL」 と呼ばれています。例えば動物にとって耐え難い苦痛があったりすると、クオリティ オブ ライフは低くなります。完全に病気を治癒できなかったり、完全に治癒するまでに長い時間がかかる時には、このクオリティ オブ ライフをいかに高くするかを考える必要があります。

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