1.ホルモンの関与
男性ホルモンの分泌量増加や男性ホルモンに対して皮脂腺の感受性が高いと、脂腺細胞が増加し、皮脂分泌量が増大する。大量に皮脂が分泌されても皮脂が毛穴より正常に出ていけばニキビにはならない。様々な理由で毛穴に皮脂が貯まったときにコメドが形成されニキビとなる。
男性ホルモン阻害剤
男性ホルモンの邪魔をする経口避妊薬や総合代謝ホルモン剤のメサルモンFが治療薬となるが、抗男性ホルモン剤の投与は専門医の分野になるため一般にはあまり用いられていないようである。
2.コメドの形成
コメドとは角質層と皮脂が混ざったもので、皮脂が分解して出来た遊離脂肪酸の色が白いため、白いものが詰まっているように見える。通常の毛穴の壁にある角質細胞は薄く簡単に壊れ毛穴から排出されるが、コメドでは角質細胞がぶ厚く固い角質細胞となるため剥がれず、そのため毛穴内で皮脂や角質詰まってしまう。
皮膚科医は石鹸洗顔を推奨するが、この場合、蒸しタオルで毛穴を十分広げてから洗顔しないと洗顔不足となる。なぜなら、ニキビの原因は毛穴に詰まったものが原因である。ただ単に洗顔しても皮膚表面の汚れがとれるだけで、なかなか毛穴に詰まった汚れまでは落ちにくい。これでは自分では洗顔しているつもりでも、実際は毛穴の汚れがとれていないので、石鹸が合ってないと悩むはめになる。
また、洗顔のやりすぎも問題である。細菌、空気中の埃や汗、遊離脂肪酸や過酸化脂質などを皮膚表面から洗い流すのはスキンケアの基本であるが、洗顔のやり過ぎで皮膚のバリア成分であるセラミドが流出し、その結果バリア機能が弱まり刺激物質の作用が受けやすくなる。洗浄ばかりに気を取られると、洗浄後に様々な皮膚トラ� �ルが発生するので要注意である。
毛穴の洗浄不足
ニキビの洗顔は毛穴の洗浄がメインとなる。そのため、蒸しタオルで毛穴を十分開かせてからが基本となる。石鹸洗顔が効果がないと感じる場合はまず、蒸しタオルで毛穴を開かせて洗顔を行って頂きたい。
また、泥パックもかなり有効で、洗顔料や石鹸で洗顔後、泥パックをすれば、毛穴に残った皮脂をさらに泥(ベントナイト)が吸い出すことが確認されている。ただし、これもやり過ぎると乾燥肌になってしまう。
3.白血球の真皮への侵入(活性酸素によるニキビ形成)
白血球(好中球)は細菌を攻撃するために活性酸素という強力な武器を持っているがそれが時として皮膚組織を破壊するやっかいな性質を持っている。
白血球の出す活性酸素による組織破壊は、我々の目には赤くなったニキビ(コメドの次の段階)として見える。さらに白血球が真皮に集まってくると膿(白血球)が貯まったニキビが形成される。老化や病気の原因は活性酸素であるとよく言われるが、ニキビの場合は白血球がつくる活性酸素が原因となる。
ここで、抗生物質というのは菌を殺すというイメージが先行しているが、実際はアクネ菌を殺す作用はさほど期待できず、むしろ白血球を皮膚表面へ侵入を許さないことによりその薬理効果を発揮する。非ステロイド系抗炎症剤のスタデルムクリームも白血球を呼び寄せない作用によりニキビ治療効果を持っている。
さらにアクネ菌が作り出す酵素によって皮脂が分解し、遊離脂肪酸が白血球を呼び寄せる強い因子となる。この皮脂分解酵素を無効にできるのは抗生物質が強く、抗生物質により遊離脂肪酸の減少が確認されている。また、非ステロイド系抗炎症剤であるスタデルムクリームも皮脂分解酵素の活性を弱める。抗生物質は白血球に働きかけて、活性酸素を出しにくくさせるが、活性酸素そのものを消す能力は持っていな� �。そこで、注目されるのが、肌に塗ると吸収され、真皮にまで到達し、活性酸素を無効化するビタミンC誘導体である。
美容皮膚科やエステサロン、一部の美白化粧品ではアスコルビン酸リン酸マグネシウムという経皮吸収可能なビタミンC誘導体を使用してニキビ治療に成果を上げている。なお、「真皮にビタミンC誘導体が入っていき、白血球が出す活性酸素を無力化することにより、ニキビ治療効果を発揮する。活性酸素により皮膚の組織が破壊されないために、赤いニキビが急激に減少する。また、細胞に働きかけてコラーゲンの合成を促すために、活性酸素でできたニキビ跡の治療にも有効である」ということを聞き、プロビタミンC臨床研究班を組織し、効果のほどを見てみました。
白血球
白血球は自分を引き寄せるものが存存在すれば血管からすぐに出てきて、皮膚内に侵入してくる細菌や物質をライソゾーム酵素で細胞膜に穴を空けて、細胞死を誘導したり、数種類の活性酸素により侵入してきた菌を抹殺する。たとえば、アクネ菌は白血球を呼び寄せる物質を作る。また、遊離脂肪酸の刺激は、白血球が毛穴に引き寄せられ真皮の生きた細胞を活性酸素で破壊し、赤くなる皮膚炎を引き起こす。これにより、我々の目にはニキビ赤くなっているように見える。本来、細菌を殺す白血球が間違って自分の皮膚を破壊しているわけである。
抗生物質は塗った部分への白血球の侵入を阻止することにより、薬理効果を発揮する。また、ビタミンC誘導体は白血球が放出する活性酸素を無力化する� �とにより、その効果を発揮する。
4.不適切な化粧品
油分の多い化粧品は確実にニキビを増やす。なぜなら、アクネ菌は油を好む菌であり、顔面へオリーブ油、椿油を塗布するとアクネ菌に分解され、オレイン酸とグリセリンに分解される。できたオレイン酸はアクネ菌の増殖を促してしまう。これでは、なんのために洗顔をするのか意味がなくなってしまう。基本的にクレンジング剤を使用しなくても落ちる化粧品がいいのであるが、これだと汗をかくと化粧崩れが起きやすいという欠点がある。ROCのサンスクリーン剤など、油分があってもニキビを出来にくいことを売り物にする化粧品もあり、適切な化粧品を選ぶのは大切だと考える。
5.前髪による顔への刺激や顔を触る癖
ストレスは男性ホルモンの分泌を盛んにしてニキビを増悪させるが、顔を過剰に指で触れたりするくせをも誘発する。皮脂が本来少ない部分のフェイスラインにニキビが出来る場合は頬杖をついたり、顔を触ったりする癖により増悪し、額のニキビも髪の毛の接触によりニキビが増悪する。抗生物質も効かない重症のニキビ患者が顔を触れるくせを皮膚科医から注意されやめたところ、ニキビが急激に軽快したという報告であるほどで、顔を無意識に触るくせはニキビを重症化に導く。自分では無意識に触る人がほとんどなので、他人に注意してもらうように頼む必要がある。海外のニキビ治療でも顔を触る癖を患者に注意することは、薬の投与と同等に重要視されている。
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アクアチムクリーム、ローション(抗生物質)
保険適用されている外用抗生物質で、アクネ菌、黄色ブドウ球菌等に対する抗菌作用を持つほか、白血球に作用して、活性酸素の放出を抑制させるように働く。アクアチムにはクリームとローションの2種類あるが、ローションの方が効果が高い。
ビタミンC誘導体
女性誌や一部の健康雑誌でも取り上げられていてちょっとしたブームになっているが、美容皮膚科やエステサロンでは経皮吸収可能なビタミンC誘導体を使用して、白血球が出す活性酸素を無力化することにより、ニキビ治療をしている。イオン導入と言って、ビタミンC誘導体水溶液を電気的に皮膚内への吸収を高める方法もあるようである。
クリダマイシン(抗生物質)
ニキビ用には許可されていないので、保険適用外であるが、費用はたいしてかからない。もともと内服用であったが、ニキビに効果があるというので、外用に処方する医師が増えている。古典的なニキビ治療薬のテトラサイクリンよりアクネ菌に対する効果が高い。現在、クリダマイシンゲル剤が臨床中で、臨床試験成績はアクアチムより効果が高いという結果が得られている。
ケミカルピーリング
ニキビというのは結局、皮脂や白血球が毛穴に詰まって行き場がないために膨らんでしまう。そこで、角質細胞を溶かして出口をつくってやれば、あっけなく治るということで、酸で皮膚の一部を溶かして、膿をだして治療する。重症のニキビには有効であるが、たまに失敗することもある。費用が高額になるのも難点。
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抗生物質(エリスロマイシン、テトラサイクリン)
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