第2回サプリメントに頼りすぎていませんか? | くすりマガジン | 日本製薬工業協会
健康ブームの中、サプリメントや健康食品が注目されていますが、まずは科学的根拠や公的基準をよく確かめることが大切です。バランスの取れた食事に含まれるさまざまな栄養成分に勝る効能は期待できませんから、不足しがちな栄養素や食品成分を補うことで、健康な体を維持していくため、あくまでも補助的に活用することが基本です。
◆ 「食品とくすりの中間」食品が増加
最近、スーパーなどに買い物に行かれた際に、ヨーグルトや飲料、食用油など、実にさまざまな商品に、「コレステロールを下げる」とか「体脂肪がつきにくい」など、健康機能や効能がうたわれていることに気づかれた方も多いと思います。
この背景には、2001年4月に「保健機能食品」制度が発足し、"栄養機能食品"と"特定保健用食品"の二分類ができたことがあります。この制度は、最近増えている健康食品被害を防止し、安全な食品提供を行うことを目的とし、国際的な食品表示の動向に沿って作成されました。
■保健機能食品の概要 | |||
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一般食品 (いわゆる健康食品を含む) | 栄養機能食品 (規格基準型) | 特定保健用食品 (個別許可型) | 医薬品 (医薬部外品を除く) |
(栄養成分含有表示) | 栄養成分含有表示 栄養機能表示 | 栄養成分含有表示 保健用途の表示 (栄養機能表示) 注意喚起表示 |
折からの健康ブームのせいか、消費者の認知も徐々にあがってきており、「トクホ」とも称される"特定保健用食品"は、いまや300種類、市場規模も4,000億円を上回るほどに急成長しています。また、いわゆる健康食品やサプリメント市場も順調に拡大しているようです。
とくに、若い女性が好んで利用している「サプリメント(supplement:補うという意味)」は、その気軽さやファッション性からなのでしょうか、「朝食を摂る代わりに、ビタミン剤のサプリメントを飲んできた」と話す女子学生が私の周りにも増えています。
最初にご説明した「保健機能食品」に定められた基準をクリアしていればとりあえずは安全ということになりますが、"足りないビタミンやミネラルを補給します"、"○○○に良く効きます"とアピールする、このようなサプリメントや健康食品は、本当に「安全で、健康によく、病気を予防する」効果があるのでしょうか?
◆ 健康被害続出の「健康」食品 ~健康食品は医薬品ではない~
最近、マスコミでも頻繁に取り上げられているように、健康食品をめぐる健康被害が続出しています。つい最近も、中国製のダイエット食品で、多数の死者や入院患者が報告されていますが、このような事例は氷山のほんの一角に過ぎません。
実際、いわゆる健康食品と称されるものの中には、あいまいな表現や、根拠のない表現のものがかなりあります。国民生活センターの苦情相談件数では毎年、化粧品やエステと並び、健康食品に関するものが上位を占めています。
ビタミンやミネラルのサプリメントについては、栄養機能食品として国の基準があり、また、特定保健用食品では有効性や安全性について審査を受け、有効性は「保健の用途」として表示ができるようになっています。
しかし、いわゆる健康食品では、口当たりの良い宣伝文句をうのみにしない、うたわれている効果を過信しない、これは怪しいぞ、とまず疑う、これが自己防衛の三原則です。食品では、薬事法の規制があって、「○○が治る」「○○に効く」といった医薬品的宣伝はできないことになっています。もし、そういう売り方をしているものがあれば、即法律違反と見なすべきですし、よくチラシや広告で見かける、「私はこれで○○が治った」という宣伝も絶対に信じてはいけない類のものです。
このような健康食品に対しては、私たち消費者が、自己責任で注意を払うしかありません。
◆ 「エビデンス」をきちんと確認すること
もっとも注意を払うべきことは、健康食品の「エビデンス」をしっかり見極めることです。「エビデンス」とは、「ある医学的事実に対する臨床的、学問的な証拠、裏付け」のことです。やさしく言い換えると、含まれている成分や効き目がしっかりと科学的に確かめられたものであるかどうか、ということです。
具体的には、商品のラベルやマークを確認することです。ちゃんとしたサプリメントなら、"栄養機能食品""保健機能食品"のマークが付いているはずです。
また、その安全性や効果・効能が、人で確かめられているかどうかも、絶対にチェックすべき点です。いわゆる健康食品の「エビデンス」の実態は、試験管レベルか動物実験レベルのものが多く、人で確かめられたものはほとんどないのが実状です。
それでも信じ込みやすいのが、「これは、○○学会で発表されました」というもっともらしい宣伝文句です。そうか、学会で発表された成分なら安心だし効くだろう、と多くの方は思うでしょう。しかし、実は学会の口頭発表は誰にでもできることになっていて、「エビデンス」にはならないレベルのものなのです。ですから、論文審査のある学会誌や学術誌に掲載され、ちゃんとした科学的評価を受けてはじめて「エビデンス」として認められることになる点を知っておいていただきたいのです。
◆ サプリメントは、あくまでも補助的に
私は、サプリメントを摂りたいと考えている方には、医師や薬剤師と相談して使用することを奨めています。なんと大げさな!と思われるかもしれませんが、近年の研究で、サプリメントが医薬品の作用に影響する例が相次いでいるからです。くすりの作用を高めたり、逆に抑制したりする悪戯をするというわけです。
たとえば、人気を博している「いちょう葉エキス」(ドイツやイタリアでは医薬品)ですが、循環器系のくすりの効果が下がり、降圧剤が効かなくなるといった動物実験結果が報告されています。また、「西洋おとぎり草」では、厚労省からも注意喚起が病院に流されています。「いちょう葉エキス」や「いちょう葉茶」の中には、アレルギーを起こす成分が含まれているものもあります。 このように、便利そうに思えるサプリメントにも一定のリスクがあることを知っていただき、信頼のおける商品かどうかをよく見極めて、かつ、あくまでも補助的に使用することが大前提です。
それでも、日本人には不足気味で摂りにくいと言われているカルシウムや鉄分などを、場合によってはサプリメントで補助する、あるいは、血糖値やコレステロールが高めの方が食事療法に補助的に使うことは良いでしょう。
◆ バランスの取れた食事に勝る健康法なし
とは言うものの、誰もが多忙で生活時間が不規則な現代ですから、きちんとバランスの取れた食生活など不可能よ!という声も聞こえてきそうです。
しかし、だからといって、朝食抜きでサプリメントを放り込んで今日も健康!ということにはならないでしょう。人の健康とは、そんなに単純なものではないからです。
米国では、20~30年かけて、脂肪の摂取量を押さえて、精製しない穀物の摂取を推しょうした結果、心臓病患者が以前より4割減となったそうです。現在では、「Five a Day運動」と言って、「一日5皿以上の野菜や果物をとろう」と呼びかけており、実際、米国でのガン患者は減少しつつあることが報告されています。
私が、食事、食事としつこく申し上げるのは、食品には栄養素以外の成分も含まれているからです。たとえば、野菜や果物には、ビタミンやミネラル以外のさまざまな成分(フィトケミカルと称します)が含まれていることが分かってきました。その中には、きっと今だ解明されていない成分もあるかもしれません。
それらの成分を一つだけ取り出しサプリメントにしても、あまり強い効果はないのです。それらが集まって、さまざまな相互作用を生んでいる結果、私たちの健康に貢献していると考えられるからです。
家族や自分の健康を真剣に考えるなら、ちゃんとした食事を摂ることに勝る健康法はありません。人間にはもともと病気を予防する自然治癒力が備わっているのですから、適切な食生活により、過不足なく栄養を摂ることで、その力を維持・増進することができるのです。
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